Hello, World.
今日はトラックボールマウスに挫折した話を書こうと思います。なんじゃそりゃって感じですが、トラックボールマウスに挫折した話です。そのまんまですね。
5年ほど前のことです。
私の隣の席に、中途採用で入社した人がやってきました。物腰が柔らかく、いつもニコニコしていて、とても感じがいい女性です。
その人は、入社当初から私物のマウスを使って仕事をしていました。そのマウスは、私が使っている会社支給の無線マウスとは何やら様子が違います。
ゴツくてかっこいい…!
その人が親指でマウスについているボールをくるくると転がすと、ポインタ(矢印)が素早く動き、みるみるうちに資料が出来上がっていきます。
「なんですか、そのマウス?! すごいですね!!」
「これはトラックボールマウスっていうんですよ。本体は動かさずに、ボールを親指で転がして操作するんです」
「へぇ〜! 使いやすいんですか?」
すると、その人が急に遠い目をしたので、「何だろう?」と不思議に思っていたら、
「前の会社で、統計資料を大量に作る仕事をしていたんです。そしたら、腱鞘炎になって、普通のマウスが痛くて使えなくなってしまって…。それで、このタイプに変えたんですよ」
「な、なるほど…」
まぁ、人生色々ありますよね。
「あっ、使い勝手はかなりいいですよ! 慣れてしまえば、もう普通のマウスには戻れません! 私は家のマウスもこれです!」
「そうなんですね…!」
これが、私が「トラックボールマウス」という存在を初めて知った瞬間でした。
ただ、そのときは「世の中にはこんな形のマウスがあるのかぁ。きっとすごく便利なんだろうなぁ〜」と感心しただけで、自分でも使ってみようとは思いませんでした。
そして最近になって、使っているマウスの底がすり減ってしまったのか、マウスパッド(これも会社支給のもの)との摩擦が気になるようになりました。
マウスを動かすと何だか引っかかる感じがして、そのたびに意識が作業からそれてしまうんですよね。
それが煩わしくて、「う~ん、新しいのが欲しいなぁ…」と思った時、真っ先に思い浮かんだのがトラックボールマウスでした。
今がタイミングというやつではなかろうか…?!
さっそくネットで調べてみると、6,000円~8,000円程度のモデルが売れ筋のようです。
た、高いッ…! 自腹で買うにはちょっと躊躇する値段です。
トラックボールマウスの先輩(例の女性)に相談してみると、「えっ! 私が使ってるのは3,000円くらいでしたけど…」とのこと。
改めて調べると、ちゃんとそのくらいの値段でありました。入門モデルという位置付けで、「とりあえずトラックボールマウスを使ってみたい」という人におすすめだそうです。
まさに私にピッタリではありませんか!
というわけで、無事にお手頃価格でトラックボールマウスを入手した私は、意気揚々と職場へ持っていき、さっそく使ってみることにしました。
特別な設定は何もなく、USBを差すだけでセット完了。簡単ですね。ただ、これまで使っていたマウスに比べるとずいぶん大きいので、かなりの存在感です。
マウスに手を乗せてみると、「ちょっと大きいかな…?」と思いました。
でも、普通のマウスとは操作方法が違うんだし、指が届かなくてクリックできないというわけでもありません。手を置く位置である程度調整ができるし、使っていればそのうち慣れるでしょう。
机の上で燦然と輝くトラックボールマウス…!
期待に胸が膨らみます。
試しに、何も開いていない状態のデスクトップで使ってみました。
すごい…!
親指を少し動かすだけで、ポインタが縦横無尽に画面上を動き回っている…!(※フラグ)
感動です。
これで私も、トラックボール先輩のように高速で仕事をこなせるようになるに違いない!
…と思いきや、30分後。
え、ナニコレ…使いづらい…。
何だかものすごく使いづらいんですけど…!!
そもそも、ポインタを狙った位置に止めることができません。
え、そこから? という感じです。というか、今まであまりにも当然にできていたので、PC作業にそんな操作がいると意識したことすらありませんでした。
さらに、全神経を親指に集中させて目的の場所(例:上書き保存のアイコン)にポインタを持っていっても、クリックした瞬間にどうしてもズレてしまいます。結果、あらぬところを押して手間が増えるという。
どうやら、人差し指でクリックする際に、親指が一緒に動いてしまうようです。
当たり前ですが、親指をボールから離したら止まります。でも、クリックするたびにいちいち親指を離すなんて非効率この上ない。
ネットで調べてみましたが、やはり普通は乗せたままのようです。
しかも、間の悪いことに、その時は年度始めの4月で、会社が一番忙しい時期だったんですよ。それにもかかわらず、朝から仕事が一つもまともに進んでいないという事実。
「これはヤバいのでは…」と背中に冷や汗が流れました。
なぜこんなクソ忙しい時期にこんなものを買ってしまったんだ、私…!!
マウスの反応速度を変えたり、持ち方を変えたり、挙げ句の果てには小指を机につけて安定性を高めるという涙ぐましい努力をしたりと、手を替え品を替え挑んでみたのですが、ダメでした。
親指を動かすまいとするあまり、右腕全体に力が入ってしまうので、肩が凝って仕方がありません。酷使している親指の付け根も痛くなってきました。
あまりの苦行に耐えかね、隣のトラックボール先輩に聞いてみました。
「このマウス、どれくらいで慣れました?」
「え~、昔過ぎてもう覚えてないけど、記憶にないってことは、そんなに時間はかからなかったんじゃないかな…?」
マジか…。私は一生慣れる気がしないんですけど…。
それでも、1週間もしたら慣れるはずだと自分に言い聞かせ、親指の痛みと肩こりに耐えながら、頑張って使い続けました。
そして10日後。
私はトラックボールマウスを使いこなすことを諦めました。
一向に慣れる気配はなく、仕事は3倍以上の時間がかかるようになり、親指と肩に限界が来ました。
正直、よくここまで粘ったなと思います。
そして、新しくマウスを買い直しました。
エルゴノミクス形状の有線マウスです。静音・抗菌・軽量が売りらしい。流線型で、白くておしゃれです。それに合わせて、グレーのマウスパッドまで揃えました。
めちゃくちゃ快適…!!
今までの苦労は何だったのでしょう。
まさに解放された気分でした。
といわけで、5年越しに手に入れた憧れのトラックボールマウスでしたが、あえなくお蔵入りとなりました。親指を動かさなければいいだけのことなのに、私の体はそんなに器用にはできていなかったようです。残念ですね。
トラックボール先輩に、「私には使いこなすことができませんでした…」と結果を報告すると、「まぁ、私は必要に駆られて使い始めただけですから。普通のマウスで不自由がないなら、それでいいと思いますよ!」と慰めてくれました。優しい!
まさかクリック1つにここまで苦労させられる日が来ようとは…。人生、何が起こるかわかりませんね。
負傷した親指は、いつのまにか治っていました。
じゃあ、また。