Hello, World. 私は最近手荒れが気になっています。
空気は乾燥しているし、蛇口から出る温水に加え、ハンドソープとアルコール消毒が私の手から皮脂を根こそぎ落としていきます。手の甲がカッサカサです。今日、観念してやっとハンドクリームを買いました(すぐに治ると思っていたんだ…)。
夏の終わりに、「国宝」という映画を見ました(※以降、ネタバレ注意)。評判がいいし、歌舞伎が舞台の映画ということで、楽しみにしていました。
歌舞伎とか能とか文楽とかって、興味はあるんだけど、気軽に「じゃあ舞台を見に行こう!」ってならなくて、ずっと気になっていたんですよね。
見終わっての感想は、正直なところ、「う〜ん?」って感じでした。
なんで主人公とライバルが、揃いも揃って女と出奔して地方巡業して舞台に戻るんだろう。ただでさえ上映時間が長いのに、同じ展開を二度見せられて苦痛でした。
まさか原作もそうなのか…?! と勝手にそわそわしてしまいました。賞をとっていて評判がいいのに、そんな雑な構成であってくれるなという勝手な願いなんですけど。原作はちゃんと?していて安心しました。
主人公が屋上で酒を飲みながら高笑いをするシーンは、演技が過剰すぎて浮いているように感じました。白虎の襲名シーンでは、彼が舞台上で血を吐くのですが、「いや、そうはならんやろ!」と思わず笑ってしまいました(これは原作通りでした!笑)。
上映時間が3時間あったのですが、途中から飽きてきて、「長いな〜」と時計が気になりだす始末。おまけに、片頭痛の症状まで出てきて、頭の中は「早く終わらないかな〜」という考えでいっぱいでした。
ラストに新聞記者になった娘と主人公が会話をするシーンがあったのですが、これは映画オリジナルで、いいなと思いました。二人の独特な距離感と空気感がうまく映像で表現されていました。
職場で映画を見に行ってきたという話をしたら、他にも見ている人が結構いました。「3時間、あっという間だった!」、「おもしろかった!」という人が多く、「つまんなくて早く終わらないかな〜って思ってた!」と言ったら、仰天されました笑。
そんな会話をした数日後、やさしい先輩が「原作小説を買ったんだよね。私はもう読み終わったから、読む?」と聞いてくれました。
…今、これを書きながら気づいたんですけど、映画をつまらないと言い放った輩にわざわざ声をかけてくれたってことですよね?! なんて懐が広い人なんだ…!!(その先輩の性格的に、何も気にしていないという可能性もあるけど)
私はひそかに「映画はつまらなかったけど、もしかしたら原作小説はおもしろいのでは…?!」と思っていたので、「読みたいです!」と言って、貸してもらうことにしました。
いざ読んでみると、完全な第三者視点の語りがちょっと独特で、最初は少し面食らいました。
でも、任侠と歌舞伎の両方の設定がかなり作り込まれていて、さすがだなと思いました。普段接することのない世界観が物珍しく、上巻の三分の一くらいまではサクサク読めました。
しかし、読み進めていくにつれ、小説全体の雰囲気がなんとなくわかってしまうと、途端に飽きてきて、読むスピードがガクンと落ちてしまいました。
私は「ヤバい。この調子だと下巻を読み終わるまでずいぶん時間がかかってしまうぞ…?!」とひとりで(勝手に)焦り始めました。
せっかく貸してもらったのだから、最後まで読み終えてから返したい。っていうか、「面白くなかったから、途中までしか読めませんでした」なんてあの心優しい先輩には口が裂けても言えないッ!!
小説の内容に興味が失せてしまった今、もはや私の頭にあるのは「早く返さなくては」とか、「汚してはいけない」とか、ネガティブなことばかり。
自分の本なら、気が向いた時に好きなペースで読めるのに…! いや、読まずに売ることすらできるぞ?! 今まさに売れてる小説だからきっと高く売れるにちがいない…!! と頭が現実逃避を始めます。
いや、そんな暇があるならとっとと読めよって感じですが。
ずっと手元に持っている(たぶん2週間くらいだけど、体感的には1ヶ月)のが気になったので、先輩に「まだ借てても大丈夫ですか?」と確認したのですが、優しい先輩は全く気にする様子もなく、「全然大丈夫だよ〜」との返答。
でも気になるッ…! 私が!!
そこで、週末の旅行に持っていこうと思い立ちました。あわよくば、新幹線での移動中や、ホテルで時間がある時に、少しでも読み進めようという算段です。
取り出しやすいように、キャリーバッグの外側のポケットに入れようと思ったのですが、はたと「待てよ。もし雨に降られて濡れてしまったら大変だな…」と思ったので、用心のためナイロン袋に入れることに。
面倒だし、出し入れするたびにガサガサと音がしますが、仕方ありません。濡れて紙がボヨボヨになるよりマシです。
苦労(?)の甲斐あり、旅行中にそこそこ読み進めることができました。新幹線で隣に座っていた人が同じく文庫本を読んでいて、私も自然と読書ができました(そういうことってないですか?)。
しかし!! まだ読み終わらないッ!!
もはや苦行です。
本を片手にのたうちまわりながら読み進めていき(もはや文字を追っているだけ)、最終章に入ると「絶対に今日中に読み終わって、明日返すッ!!」とスパートをかけ、どうにかこうにかラストまでたどり着くことができました。
ラストはかなり意外でした。「へぇ〜そういう終わり方か〜」って感じ。古今和歌集の「世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも知らずありてなければ」という歌を思い出しました。
主人公は完全に歌舞伎の世界の住人になってしまったのですね。現代的にいうとメリーバットエンドというところでしょうか。中国から戻ってきた幼馴染との再会シーンも見たかった。
全体としては、世界観の破綻もなく、徹底的に徹底的に(2回言う)作り込まれているなという印象でした。特に物語の構成力が抜群で、途方も無い作者の粘り強さを感じます。さすが吉田修一(何様??)。
私の趣味と合わなかった(緻密な設定と構成に人為的なものを感じてしまい、説明を読んでいる感じで、世界観に没入ができなかった)のは残念でしたが、小説としての完成度の高さは素晴らしいです。間違いなく大作です。
さて、何はともあれ、めでたく読み終わりました!!
クローゼットに保管していた見知らぬブランドのロゴが入った紙袋(先輩から貸してもらった時に入っていた)を、晴々とした気持ちで取り出します。
そっと本を入れて(そして、二三回入れ直して)、明日先輩に渡すときのシミュレーションをします。
「先輩! これ、ありがとうございました! 映画とは結構違うんですね〜! ラストが意外でしたぁ!!」
よし、完璧。
こうして、私は久しぶりに枕を高くしてぐっすりと寝ることができたのでした。めでたしめでたし(大袈裟)。
今回の教訓は、「私は、人から本を借りてはならない」です。
何だかすごく疲れました!!
おもしろくなくても読まなくちゃいけないし、早く返さなくちゃと思って自分のペースで読めないし、本を汚したらと思うと気を使うし…!!
全部、私の独り相撲なんですけどね!!
先輩は、私がこんな七転八倒しながら読み終えたとは夢にも思うまい…!(※普通、誰も思いません)
じゃあ、また。